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第51回 苦しめる「尊敬されたい心」
執筆年  2001年   

画・ざむ姫

きっと、経営者になりたいという人の中にはその理由として、「偉いと思われたい」からという人がいると思います。この話はそんな人がきっと陥る”落し穴”であり、また僕も同じように落っこちた穴です。役に立つと思いますので公開します。

人にはいろいろな「~したい」という欲求があります。
ご飯をたべたい。眠りたい。人から褒められたい。尊敬されたい。安心したい。安定した生活がしたい。学びたい。成長したい。変化が欲しい。貢献したい。役に立ちたい。愛したい。愛されたい。
どれも持っていますが、それぞれどれかに特に焦点を合わせているものです。

僕が今まで一番集中していた欲求は「尊敬されたい」でした。
今でも人から「すごい」と感心されたり尊敬されるのが大好きです。
実はこの「尊敬されたい」が「愛されたい」と喧嘩して僕を苦しめていました。
最近、自分が人からの尊敬に一番集中してしまった理由を考えました。思い当たったのが、僕は実は学生のころ、みんなとあまり上手に仲良く出来なかったのです。仲良しグループと呼べるものは無く友達が少なくて寂しかったのです。みんなと仲良くしたい、でもなぜか仲良く出来ないというジレンマに陥っていました。
そんなジレンマからでしょうか、時には自分よりも尊敬を集めている人を陰で批判したり、直接批判しました。人が褒められているのを聞くとコキ下ろしたくなりました。(嫌なやつですね~)

しかし、先生やクラスメイトがらからすごいね!と褒められ、ちょっとしたヒーロー気分でになれるときがありました。それは文化祭や学園祭で持ち前の独創力を活かして大活躍をした時です。みんなの中心になれるというのは快感でした。
それで、「大きな活躍をすればみんなが注目してくれて気持ちいい」という反応のパターンが出来てしまったようです。つまり、おかしなことに本当はみんなと愛を分かち合って仲良くしたいのに、「尊敬されたい」がリストの一番に来てしまいました。だからどんなことをすれば僕を偉い人と思ってくれるかばかりに集中してしまったのです。

やがて僕は学校を卒業して起業したわけですが、会社を作って人よりも多くの収入や高い地位、高価な物を得れば、多くの人から尊敬されるだろうと自然に考えてしまいました。
ところがどんなに大きな収入や、社長という肩書きがついても僕の心の中の虚しさは消えませんでした。むしろ、経済的に成功して、安定した生活や自己成長などの他の欲求が満たされて行くと、一番集中していた尊敬されたいという欲求だけ取り残される格好になってしまいました。
残された満たされない欲求はやたらと目立ち、どうしようもない虚しさの原因になっていたのでした。
人生はきっと多分こんなものなんだろうという諦めの思いと、本当にこんなものなんだろうかという疑問がモヤモヤした形でありました。

人よりも偉くありたかったので、相手の考え方を受け入れたり、自分から愛を示すことはあまりしませんでした。
今から考えると全くバカらしい話ですが、相手と自分のどちらが立場が上かで勝ち負けを決めていました。
恋愛でも「僕が相手を好きになるよりも、相手の方が僕を好きになってくれたら僕の勝ち」という典型的な天秤的な人間関係の考え方でした。書いてて嫌になりますね。

間違えないで欲しいのは、人の尊敬を求めてはいけないということではありません。人から尊敬されたいと感じるのは自然なことです。しかし、人からの尊敬に集中してしまうと、”幸せの基準”が他人に行ってしまいます。幸せに感じる基準が自分自身の中にないとどんなに頑張っても、いつも不安がつきまといます。人の心を操ることは出来ないからです。

尊敬されたいという気持ちは、愛する、愛されたいという気持ちと喧嘩をします。尊敬されたい心が強くなりすぎると自分から愛を示せなくなります。なぜなら、自分をより強く偉く見せようとして、「あなたと私は違うよ」というスタンスになるからです。当然、そんな態度のあなたを相手は受け入れず、あなたの本心が欲しがっている”愛に満ちた人間関係”が築けなくなります。

それでは、一体どうしたらよいか?
答えは簡単でした。前のコラムでも書いたように「愛と貢献」に集中すればよいのです。
とりあえず僕は、「今、愛を感じる為にはどうしたらよいだろうか」という質問をすることにしました。
人と会うときも、朝起きたときも、電車に乗っているときも質問してみました。効果は皆さんでやってみてください。1ヶ月も質問し続けているとたくさんの愛に包まれていることに気づきます。そして、自分の中にも人に与えられるだけの愛が湧いてきて、別に恋人とかに限った人だけにではなく、関係する人全てと暖かい関係が築けるのです。

そして、同じように、「自分が人に貢献できることなんだろうか」と常に質問してみてください。
誰かに会ったら「この人の成功にどんな貢献が出来るだろうか」と質問します。そして実際に行動するのです。貢献する為に学習し、自分を高めて、いろいろなことを経験していくと、人の役に立つ能力がついてきます。それを人の為に使うとどうなるか? 周りの人はあなたをどう見るでしょう? そして、あなたはどう感じるでしょう?

これを始めると、僕が体験したようにあなたも劇的に変化しますよ。

■2005年からのツッコミ■
よく勇気を持って告白しました。こういう自分の痛い部分を人に言えるようになったのは、エゴが癒されてきたからですね。


第50回 収入の先には収入しかない

第52回 間違った価格の付け方


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