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第85回 孤独のプログラム
執筆年  2002年   

画・ざむ姫

セールスマスターというセミナーを行いました。
4日間は参加者にとっても衝撃的だったと思いますが、トレーナー側も衝撃的でした。
セールスマスターの中で皆の前で話しましたが、4日目の朝、僕はお風呂につかりながら泣いていました。自分を苦しめていたプログラムの原因を発見した瞬間でした。

僕の成功の過程は孤独でした。
孤独の中で苦しみ、孤独と闘いながら、孤独の中で勝利したのです。

僕は以前のコラムでも書いたことがありましたが、なかなか人と仲良くなれませんでした。
本当は仲良くしたい、でもいつかまた仲間はずれにされるのが恐い。
それは、尊敬されたい気持ちとなって、中学、高校と進む中で僕は周りの人を見下すようになりました。
仲良くしているグループを見ると羨ましいのですが、それが出来ない為に心の中で「あいつら群れやがって」と否定していました。

僕はずっと人間関係を勝ち負けで見ていました。彼女との関係も、勝ち負けです。
ですから自分から愛を見せることはせず、高慢に振舞いました。

ところが僕が欲しかったものは愛ある関係を築くことでした。でも強い人間のように偉く振る舞っていました。そうすればするほど孤独は増していきました。

経営者になると言ったのは、寂しさの反動でもあります。
凄いことをすれば皆が注目してくれて、自分が中心になれる。きっと会社を作ればきっと皆がすごいと思ってくれるでしょう。”社長の私”を尊敬してくれると思いました。

実際、会社を作ったところで、尊敬してくれる人はあまりいません。
そして、人間関係を勝ち負けで考えていたので、真のビジネスのパートナーと呼べる人は一人も出来ませんでした。

100万円の月収をとっても、一応は「凄いね。」と言われますが、愛されることはありません。1000万円だって同じです。その先にはずっと同じ景色の階段が続いているだけです。


このパターンの原因となった体験というのはこんなものでした。
小学校のころにいじめというほどのレベルではありませんが、クラスメイトから村八分にされた経験があります。ハブですね。
僕は小学校の頃、クラスのリーダー格でした。皆の上に立ち威張っていました。弱い子をいじめもしました。
それがある朝、学校に行くと誰も口を聞いてくれなくなってしまったのです。いつも命令口調で威張っている犬飼を皆が団結して仲間はずれにしたのです。
大きなショックでした。

この状態は1ヵ月程度で収まりましたが、それ以来僕は人と仲良く出来なくなってしまったのです。
表面的にはみんなと仲良くしていましたが、常に心理的に距離を置いていました。また仲間はずれにされるのが恐いからです。

たった一度のいじめの経験で、僕はその後20年もの間、自分を苦しめるプログラムを作ってしまいました。それは気がつかない内に、毎日の行動の中で働き、僕の人生を支配していたのです。
そのプログラムは自分を苦しめない為に、仲間と距離を置くプログラムでしたが、愛に溢れた関係を築きたいという根本の欲求とケンカして、人を見下すという行動を僕に起させました。
そして、社会に出てから、本当の挑戦が始まってから、僕を本格的に苦しめてきたのです。

セールスはなぜ人を強くするのか。それは本当の自分を見つけ出すからです
普段の生活では、私達は特に自分を真剣に見つめなくても生きていけます。サラリーマンにとって日常生活は繰り返しが基本です。余程のことが無い限り自分の性格や思考パターンを深く考えてみる機会はありません。今の自分の行動を支配しているプログラムに気がつくことはありません。
ところが、セールスでは外部からあまりに大きなストレスを受けるため、前に進む為には自分の内部を覗き込まざるを得ないのです。
そこには弱い自分がいます。今まで弱い本当の自分を隠して生きてきた人も、それを無視して進むことは出来ません。
必ず弱い自分にしているプログラムがあるのです。
本当の自分の姿を受け入れて認め無い限り、前に進むことは出来ません。


僕は、もう自分から人と距離を取って孤独感に悩まされることは無いでしょう。
あったとしても、今の僕には必要の無いプログラムが作動しただけだということを思い出して、すぐに意識的に停める事ができるでしょう。


■2006年からのツッコミ
思い出しますね~。
内面を見つけるきっかけになるのは、セールスに限ったことではありませんけどね。
病気だったり、リストラだったり、離婚だったり、要するに超ショックな出来事にぶつかったとき、自分を見返すんですね。
だから、そういった”不幸”な出来事こそ、人生全体から見るとギフトなのです。


第84回 不死身

第86回 『貧乏人』シリーズ


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