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第109回 辛いあなたにおめでとう
執筆年
2003年
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ベルテンポの高萩さんとお会いしました。 高萩さんの”映画”はうらやましいほど感動的です。 8歳の時に父親が2億の借金を残して蒸発。 生活保護を受けることに。そういう人がそうなるようにヤンキーに。 高卒で小田急電鉄に就職。仕事は切符切り、ホームの汚物処理、夜の酔っ払い起こしなど。1年で300人の自殺者を見る。 ワーキングホリデーでカナダに行き、帰国後は日本旅行に就職。 1999年に身障者や高齢者向けの旅行代理店を起こし、去年やっと黒字に。 そして、今ちょうど大ブレイクが始まっています。 今日、高萩さんに会った帰りの電車で、自分のちょっと感動的な場面を思い起こしていました。 僕は中古車ブローカーとして独立。 いかに安く買うかばかりを考えているお客さんを相手にして苦労しました。 お客さんにだまされました。眠れないくらい相手を憎みました。 同業者にはもっとだまされました。 それまで両親に愛されて大切に育ってきたので、ひどく打ちのめされた気分でした。 もっと強くなりたいと思いました。 騙される人間が悪いのだと思い、自分もずるい人間になる道を選びました。 上手に人を騙すようになりました。 自分が利益を得ることは相手に損させることだと考えるようになりました。 お金を稼ぐことがどんどん辛くなりました。 騙し合いの業界がいやになり、車検代行サービスをはじめました。 毎日、パソコンで作ったチラシを車のワイパーにはさんで回りました。 ある時、同級生のお母さんを見かけて思わず車の陰に隠れました。 チラシ撒きをしている自分を見られることはこれ以上ないほど恥でした。 隠れながら撒いたチラシですが、反応は滅多になく暇な日々が続きました。 来週の仕事の予定はほとんど入っていない状態でした。 心配をかけたくなかったので、両親には仕事がある振りをしていました。 毎月決まったお給料がもらえたら、どんなに安心だろうかと思いました。 近所に日経新聞に就職した同級生の女の子がいました。 僕が車検のためにお客さんから預かった車を洗車していると、彼女はその横をさっそうと通り過ぎます。 彼女の仕事を考えると、自分が恥ずかしくて声を掛けられませんでした。きっと会社で必要とされ、やりがいのある仕事を任されているのだろうと想像すると心からうらやましく思いました。 すべてが貴重なシーンです。 これらのシーンをカットしてしまったら、僕の映画はつまらない映画になるでしょう。 成功の喜びはまさにその過程にあります。 辛ければ辛いほど、その映画は感動的になります。 不思議なもので、昔は遠回りだと思った道も、後になって振り返ると通るべき道だったとわかることが多いのです。 僕の周りには、成功を目指して起業したけれども辛い時期にさしかかっている人がたくさんいます。 昔の僕のように情けない自分に直面して、落ち込んでいたりします。 その姿を見ていると、なんとも祝福してあげたい気持ちになります。 大丈夫、あなたが諦めなければ、成功があなたを見放すことはありません。
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