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第61回 恐怖の物語
執筆年
2001年
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今回は恐怖の物語を紹介します。 恐怖のモティベーションにでも使ってください。(笑) ある男が今日の高校の同窓会で出会ったあいつを思い出し眠れなくなってしまった。 男は60歳を向かえ、めでたく定年退職した。 愛する家族にも囲まれ、会社では部長という地位にまで登った。都心からかなり離れているけれど、一戸建ても買った。幸せを羨む声も聞いた。 彼は幸せだった。と今までは思っていた。 同窓会のメンバーの中に、あいつがいたのだ。 高校の時には背が小さく、明るい方でもなかったので全く目立たなかった奴だった。 名前を聞いてもなかなか当時のあいつを思い出せなかったくらいだ。 使い走り役でジュースを買いに行かせたりしたものだ。 それが今では会社を5つも持つほどの成功した経営者だそうで、そのうちの一社は聞いたことのある有名な会社だ。どこに住んでいるのかと聞けば、庶民では決して手が出ない高級住宅地であり、しかも別荘をハワイに持っているそうだ。 多くの同級生が抱えるような老後の不安もなく、いかに幸せかが、あいつの顔の余裕で分かった。 男は今日のことを思い出すうちに、昔、自分もいつか会社を辞めて自分の会社を興したいと夢見ていたことを思い出してしまった。 その途端に自分の周りに怒りが込み上げてきた。 俺は実際、どう考えても起業など出来る状態ではなかった。 20代で結婚して二人の子供が出来た。 大学にも行かせてやった。教育費はバカにならない。 マンションも買い、毎月のローンもあった。 そうだ、勤めていた会社も大変な時期を乗り越えた。 大きな貢献をしたはずだ。 とても辞められる状況ではなかった。 あいつはラッキーだったんだ。 たまたま独立する話が来たに違いない。 それに比べて、俺にはチャンスは一度も来なかった。 人生は不公平だ。 男は様々な非難の的を探したが、見つからなかった。 いや、あいつは金持ちだが、本当は何かで不幸に違いない。 不公平にならないようにどこかでバランスが取れているものだ。 そうだ、あいつは本当は不幸に違いない。 そこでもう、考えることは止めることにした。 これ以上考えると、「本当の理由」に気づいてしまいそうだ。 残りの人生を惨めな思いで過ごしたくない。 空が明るくなる頃にやっと眠りに着いた。 しかし、男はあの日以来、ついつい 「もしも、もう一度人生をやり直せたら・・・」 などと考えてしまうのだった。 おしまい。 こういう人生だけは絶対に嫌ですね。 ■2005年からのツッコミ■ 定年退職してからでも気づけばいいですけどね。チャンスはいつでもそのときですから。 ■2011年からのツッコミ■ 今から思えば、恐怖のボタンで走っていたんだなぁ~と言うことが解ります。 だから、こういう風にある特定の生き方否定しているので、その生き方をしている人をみるとイライラするし後悔するような人生になったらどうしよ~と不安でたまらないんでしょうねぇ~ 「全ての人生には、それぞれの喜びがある」と言うことが解ると 全ての人生を祝福することができますよね。
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